Python 入門2¶
この回では、プログラミングの基本的知識についてさらに学ぶ。
前回学習したwhile
ループのような制御構造であるfor
ループやif
文の使い方、 さらに、科学計算用ライブラリnumpy
の基本的な使用方法について学ぶ。
繰り返し構造¶
for ループ¶
for
ループは、while
ループによく似た繰り返し処理を行うための枠組みである。 ただし、Pythonのfor
ループは、FortranやC言語のものとは少し異なる。
[1]:
# 文字列を複数格納したリスト
words = ['cat', 'window', 'defenestrate']
[2]:
for w in words:
print(w, len(w))
cat 3
window 6
defenestrate 12
ここでfor w in words:
は、
words
の中から1つ要素を取り出してきてw
に代入する。for
文以下ブロックの命令を実行する- それが終わると、
words
の次の要素をw
に代入する。 - すべての要素について計算が終われば
for
文の実行を終わる。
range() 関数 を用いた繰り返し¶
for
文によく用いられるものがrange
関数である。
[3]:
for i in range(5):
print(i)
0
1
2
3
4
このように、for i in range(5):
とすることで、i
に0〜4までの数字を順に入れて繰り返し計算をすることが可能である。
for ループの応用 〜ベクトル・行列計算〜¶
これまで学習したリストと for
ループを使って、ベクトル・行列演算を実装してみよう。
なお、ベクトル・行列演算は後述のnumpyという計算ライブラリに実装されている。 速度・確実性の観点から、本来は確立されたライブラリの機能を用いる方がよい。
今回はプログラミング学習のため、あえてこれを実装する。
[4]:
# 以下の2つのベクトルの内積を計算する。
x = [1.0, 2.0]
y = [1.0, 3.0]
len(x) がリストxの要素数を返すことを思い出そう。
上記のrange()
関数と組み合わせることで
for i in range(len(x)):
i
を0からxの要素数まで変化させることができる。
[5]:
dot = 0.0
for i in range(len(x)):
dot += x[i] * y[i]
[6]:
print(dot)
7.0
課題1¶
同様に、以下のベクトルの内積を計算せよ
[7]:
# 解答をここに記入する
行列とベクトルの内積¶
行列は、リストの中にリストを作ることで表すことができる。
は、以下のように表現できる。
[8]:
A = [[1.0, 0.0], [2.0, 3.0]]
print(A)
[[1.0, 0.0], [2.0, 3.0]]
[9]:
print(A[0])
[1.0, 0.0]
[10]:
print(A[0][1])
0.0
課題2¶
上の例と同様に、行列とベクトルの積を計算せよ。
なお、len(A)
で行の数を、len(A[0])
で列の数を得ることができる。
また、リストの.append()
関数を使うことでリストへの要素の追加が可能である。
としたときの \(A\) と \(x\) の内積を計算せよ。
[11]:
# 解答をここに記入する
Pythonの関数¶
上記の内積・行列積・外積のように、何度も行う操作を、操作の数だけコードを書くことは非効率である。 このような同一の操作を汎用的に行うことができる仕組みを関数と呼ぶ。
関数は、引数で与えられた入力に対して、何か計算した結果を戻り値として返すものである。 例えば、これまで出てきたlen()
も関数である。
リストx
が引数に与えられたとき、その要素数を戻り値として返す。
[12]:
len(x) # リスト(など)を引数にとり、要素数を返す関数
[12]:
2
関数は、以下のように定義する。ここでは、2つのリストを引数に持ち、その内積を計算する関数を作る。
[13]:
# 関数の例 `def` + 関数の名前(この場合はlist_dot)+ カッコ として定義する。
# カッコの中に引数を入れる。
def list_dot(x1, x2):
"""
2つのリストを受け取り、その内積を計算する関数。
なお関数に関する説明は、
このように3つの連続するダブルコーテーション内に記述することが推奨されている。
"""
dot = 0.0
for i in range(len(x1)):
dot += x1[i]*x2[i] # x += y は、x に x+y を代入することを表す。
return dot # return 文で計算した値を返す。
この場合 list_dot(x, y)
のように関数名(変数, 変数)とすることで、 この関数を実行することができる。
この関数が実行されると、まずdot
という変数が定義され、値 0.0 が代入される。 次の for
ループにより内積の値がdot
に代入される。 計算されたdot
の値が返される。
このように定義した関数は、繰り返し用いることができる。
[14]:
x = [1.0, 2.0]
y = [2.0, 1.0]
print(list_dot(x, y))
4.0
[15]:
x = [1.0, -2.0]
y = [2.0, 1.0]
print(list_dot(x, y))
0.0
課題3¶
2つの行列 \(A, B\) の積を計算する関数を作成せよ。 1つの関数により、以下の組み合わせの行列に対して計算せよ。
- \[\begin{split}\;\; A = \left(\begin{array}{cc} 1.0 & 2.0 \\ 2.0 & 3.0 \end{array}\right) ,\;\; B = \left(\begin{array}{cc} -1.0 & -3.0 \\ 0.0 & 1.0 \end{array}\right)\end{split}\]
- \[\begin{split}\;\; A = \left(\begin{array}{ccc} 1.0 & 0.1 & 1.5 \\ 0.9 & 0.2 & -1.0 \end{array}\right) ,\;\; B = \left(\begin{array}{cc} -2.0 & -0.5 \\ 0.0 & 1.2 \\ 0.8 & 1.0 \\ \end{array}\right)\end{split}\]
[16]:
# 解答をここに記入する
数値計算ライブラリNumpy¶
Pythonは科学計算に用いることのできるライブラリが十分に用意されていることが特徴である。 ここでは、最も基本的な数値計算ライブラリであるNumpyを使用する。
基本的な使い方¶
まず、PythonでNumpyを用いるための命令をする必要がある。 これは前回学んだmatplotlib
を用いるときと同様のimport
文を用いる。
[17]:
# まず最初に、グラフ描画ライブラリと、数値計算ライブラリをimportしておく。
import numpy as np
# 同様にmatplotlibもimportしておく。
%matplotlib inline
import matplotlib.pyplot as plt
なお、as np
の部分は、numpy
を省略してnp
として用いる、という意味である。
原理的には各自の好きな略語にできるが、numpy
の場合、np
と略すのが一般的である。 逆にそれ以外の略称を用いることは、コードをわかりづらくさせるので避けるべきである。
数学関数の計算¶
ここでは、Numpy
の機能の1つである特殊関数の計算をしてみる。
[18]:
# sin 関数
np.sin(1)
[18]:
0.8414709848078965
このように、numpyの機能を用いる場合は、np.
の後に関数名を書いて実行する。
他に使える数学関数の一覧は
http://docs.scipy.org/doc/numpy/reference/routines.math.html
にリストされている。
なお、Colabでは関数にカーソルをホールドすることで、その関数の説明を見ることができる。 Jupyter-notebook では、関数の括弧内にカーソルがあるときに Shift + Tab
を押すことで、同様の説明を見ることができる。 説明は英語であるが、わざわざマニュアルを検索しなくても簡単な情報は得られるようになっている。
次に、この関数の形を視覚的に把握するためにグラフにプロットする。
[19]:
# まず、計算する範囲、個数を指定する。今回は、-5~5, 100 点で計算する。
x = []
y = []
for i in range(100):
x.append(-5.0 + 10.0 / 100 * i)
y.append(np.sin(x[i]))
[20]:
plt.plot(x, y, '-o')
[20]:
[<matplotlib.lines.Line2D at 0x7fbbc28dec40>]
課題4¶
以下の関数を(-3 ~ 3)の範囲でプロットせよ
なお、\(f(0)=1\)であることに注意する。
[21]:
# 解答をここに記入する
課題5¶
大きな整数 \(k\) の階乗は
で近似できることが知られている(スターリングの近似)。
\(k = 1, 2, ... , 200\) について、\(\log(k!)\) および \(\frac{1}{2}\log(2\pi k) + k\log(k) - k\) を一つのグラフ上に描画せよ。 なお、\(\pi\)の値はnp.pi
から得ることができる。
[22]:
# 解答をここに記入する
条件分岐¶
以降では具体例として, 精度よくかつ効率的に\(\log(k!)\)の値を計算できるプログラムを作成することを目指す. それを通して, コンピュータで数値計算をさせるための基礎を学ぶ. 具体的には, ユーザーにより与えられた\(k\)の値に応じて, \(\log(k!)\)の値を計算し, 画面に表示することを目指す.
\(k\)の値が小さいとき, \(\log(k!)\)の値は, \(\sum_{n=1}^{k}\log(n)\)からすぐに計算できる. 一方で\(k\)の値が例えば100,000を超えるようなときは, 100,000回の対数の計算をする必要があり, 大きな計算コストが必要である. そこで前章の演習問題で学んだように, 大きい\(k\)の場合には直接\(\sum_{n=1}^{k}\log(n)\)を計算するよりも, その近似である\(k\log{k}-k\)を計算する方が圧倒的に高速である.
高精度・高効率に\(\log(k!)\)を計算するプログラムは以下のような手順を実行することになる.
- ユーザーから\(k\)の値を受け取る.
- 与えられた\(k\)の値が, あるしきい値\(k_0\)よりも小さければ\(\sum_{n=1}^{k}\log(n)\)を計算する.
- 与えられた\(k\)の値が, あるしきい値\(k_0\)よりも大きければ\(k\log{k}-k\)を計算する.
- 結果を画面に表示する.
課題6¶
\(\sum_{n=1}^{k}\log(n)\)の値と\(\frac{1}{2}\log(2\pi k) + k\log{k}-k\)の値の差の絶対値を \(k=1,2, \cdots, 1000\)について計算し, その差が\(10^{-4}\)より小さくなる最小の\(k\)の値を求めよ.
なお, 本課題は以下の条件分岐を学んでから取り組むと, 効率的に解決できる.
[23]:
# 解答をここに記入する
if 文の文法¶
上記に示した手順のうち, 2および3は, 特定の条件が満たされたときに計算の挙動を変化させている. それを実現する枠組みを条件分岐と呼ぶ. Pythonでは, if
文を用いて条件分岐を行う.
以下に, if
文の一つの用例を示す. ここでは, 二次方程式の判別式を計算して, それが正, 零, 負であるときにそれぞれ異なる処理を行っている.
[24]:
def discriminant(a, b, c):
"""
a x**2 + b x + c = 0 に実数解が存在するか調べるプログラム。
2つの実数解が存在する場合は `two real roots` を、重根が存在する場合は `one real root`を、
実数解が存在しない場合は `two complex roots` を表示する。
"""
d = b**2 - 4.0*a*c
if d > 0.0:
print('two real roots')
elif d == 0.0:
print('one real root')
else:
print('two complex roots')
[25]:
discriminant(3.0, 2.0, 1.0)
two complex roots
このようにif
文を使えば、if
文直後の条件が真か偽かに応じて処理を分岐することができる。
具体的には以下の表のように、適当な等式あるいは不等式を書くことが多い。
Pythonでの書き方 | 意味 |
---|---|
x == y |
\(x=y\) (イコール) |
x != y |
\(x\neq y\) (ノットイコール) |
x < y |
\(x<y\) (小なり) |
x <= y |
\(x\leq y\) (小なりイコール) |
x > y |
\(x> y\) (大なり) |
x >= y |
\(x \leq y\) (大なりイコール) |
if
文の仕様パターンは大きくは以下の3通りである。
if 条件:
処理
if 条件:
真の場合の処理
else:
偽の場合の処理
if 条件1:
条件1が真の場合の処理
elif 条件2:
条件1が偽であり条件2が真の場合の処理
else:
条件1、2が偽である場合の処理
課題7¶
二次方程式の判別式を計算し、それが正の時は二実数解、零の時は重解、負の時は複素数解を計算するプログラムを作成せよ。
なお、複素数は \(a + b i\) は a + bj
で以下のように表すことができる。
[26]:
# 2+3i は以下のように表す。
2 + 3j
[26]:
(2+3j)
[27]:
# 解答をここに記入する
課題8¶
以前の演習問題で求めた \(\sum_{n=1}^k \log(k)\) の値と \(\frac{1}{2}\log(2\pi k) + k \log k - k\) の差が\(10^{-4}\) より小さくなる\(k\)の値を用いて、効率よく\(\log(k!)\)を計算できる関数を作成せよ。
[28]:
# 解答をここに記入する
特殊関数の計算¶
Pythonの特徴は、多様な数学ライブラリが簡単に使える点にある。 ここでは特殊関数の一つであるベッセル関数の計算をする。 ベッセル関数は
の特殊解の一つであり、 第一種ベッセル関数は
の形で表される。 ここで \(\Gamma(x)\) は別の特殊関数であるガンマ関数である。
発展的な数学に関するライブラリとしては scipy
が有名である。 特にこのような特殊関数は scipy.special
にまとめられている。
v
次の第一種ベッセル関数は scipy.special.jv(v, x)
とすることで呼び出すことができる。詳しくは こちらを参考にすること。
[29]:
# scipy.special をインポート
import scipy.special
[30]:
# まず、計算する範囲、個数を指定する。今回は、-5~5, 100 点で計算する。
x = []
j0 = [] # α=0 のベッセル関数を計算し格納するリスト
j1 = [] # α=1
j2 = [] # α=2
for i in range(100):
x.append(20.0 / 100 * i)
j0.append(scipy.special.jv(0, x[i]))
j1.append(scipy.special.jv(1, x[i]))
j2.append(scipy.special.jv(2, x[i]))
[31]:
# これらの結果をプロットする
plt.plot(x, j0, label='a=0') # `label=` のあとに文字列を指定することにより、後ほど凡例を表示できる。
plt.plot(x, j1, label='a=1')
plt.plot(x, j2, label='a=2')
plt.legend() # 凡例を表示するためのコマンド
[31]:
<matplotlib.legend.Legend at 0x7fbbc2075dc0>